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藤猫のオススメ本の紹介・今日の1冊

マンガから、小説、随筆まで、

藤猫がオススメの1冊を紹介いたします。

「魂の森を行け」・一志治夫 著・集英社インターナショナル

この本は下の本の著者「宮脇 昭」の半生を描いたドキュメンタリーです。日本の森林の植生を調べつくし、人々が高度経済成長で足踏みする事無く、自然を破壊し都市を築いていた頃から、いつか自然の揺り戻しが来ることを懸念して、早い時代から環境破壊を訴え続けていた宮脇を取材し、行動、信念を描きまとめた1冊です。

1冊でも多くの大人、子供達に読んで欲しい本です。これまでの間違っていた方向を見直し、環境を破壊して何かを作るときには、元にあった倍以上の植樹をして森や土の持つ、自然治癒力を高めながら公共事業や建設事業を進めていかなければなりません。この本を読み終わった頃には、きっと自分たちで住む星を、守りたい活動に参加したいと思うに違いありません。

「森よ生き返れ」・宮脇 昭 著・大日本図書

著者は植物学者ですが、今世界で一番忙しく、そして誰よりも熱心に情熱的に動き、地球全体のことを考え、環境保護、環境復活への活動を興している人です。以前は人間が住むためには森は敵であり、街はコンクリートで埋め尽くし、整備されつくしています。ですが、その状態は間違っていたと、多くの人々が見直すようになりました。この本は人間が自然と共生していくための、環境復活への歩みだすための本だと思います。

「日本一の昆虫屋(志賀昆虫普及社と歩んで、百一歳)」・志賀卯助 著・文春文庫

皆さんは子供の頃、昆虫採集をしたことがありますか?私は採集ではありませんが、カブトムシやクワガタ・トンボや蝶など、姉弟で虫取り網を持ってドングリ林やクリ林へ出かけたことがあります。著者は貧しい農村で生まれ、当時、世の中の人々が昆虫に関心の無い時代に、東京で初めて昆虫の標本の仕事に出会います。その頃はカラーの図鑑など無く、標本が理科や役所の害虫や益虫の説明に使われていました。今よりうんと昆虫が多い時代の事です。今では野原は宅地に変わり、川辺に生えていた食草は河川の3面張りで消えて行き、その食草と共に餌をなくした昆虫は絶滅していきました。世の中に昆虫を知ってもらいたいという情熱で一心にいきてきた著者は今年、百一歳を迎えました。今は、昆虫を愛する心を通して環境破壊・環境保護へも関心をもって欲しいと思っています。

「ポプラの秋」・湯本香樹実 著・新潮文庫

久々に良い本に出会いました。作者は以前にも紹介した「夏の庭」の著者。前回は一人暮らしのお爺さんと少年達の物語でしたが、今回の「ポプラの秋」は父を亡くした少女とアパートの管理人であるお婆さんとのお話。お婆さんはかわいがられたりするような人ではなく、むしろ女ポパイのような顔で厳しく、こわい人なのに、主人公の少女は色んな意味で何度もおばあさんに助けられます。

人は本当に大事な人を失った時、少しおかしくなります。本人には分らなくても、そんな時に心はバランスをとろうと一生懸命です。おばあさんは色んな人の心のバランスをとってあげる人だったのですが、それはお婆さんが死んだ時に持っていく約束をした手紙という形。そんなお婆さんにも最期の時がやってきます。

私は今も文通はしていますが、一時期はすごい手紙の量でした。色んな不安に押しつぶされそうな時期だった頃と重なります。口では話せない、話しにくい事柄を書くことで、誰かに自分を理解してもらいたく、そして、書くことで自分の内面とも対話していたのだと思います。私の手紙や気持ちを受け取ってくれていた、沢山の文通友達に有難うと思います。皆さんのおかげで生きています。

「カンヴァスの柩」・山田詠美 著・新潮文庫

著者の初期の短編です。3組の男女の恋愛の物語ですが、最初の話は結婚に疲れた夫婦の心の復活の話かな。2話は恋多き女性が結婚後自分の中に恋愛感情がなくなってしまったという残念な気持ちが、若い青年と出会い、恋愛の気持ちが蘇る・・が、しかし・・・。

3話がこの中では好きな「カンヴァスの柩」わがままだけれど、可愛いススと、絵描きの青年ジャカとの生活の日々の物語。

「蝶々の纏足・風葬の教室」・山田詠美 著・新潮文庫

この本の主人公は引っ越してきた女の子が主人公なのですが、かなり強烈なインパクトを残しました。そこらのミステリーやサスペンスなどは適わないくらいの精神的な恐怖というか。どうすれば脱出できるのか?という気持ちがキーワードかなと思います。自分の人生なのに、決して主人公にはなれない、いつも誰かの引き立て役にしかなれない苦痛から逃れる為の賭けのような恋愛。

もう一つは、転校生という自分の立場をただ、なんとかやり過ごしたいのにできなかった。執拗ないじめからの脱出のために、強くならなければならなかった少女の心の変化を綴った物語。思春期という難しい時期の心理状態を上手くスプーンで掬い取ったような表現力でした。自分が学生の頃に戻ったような気がしました。

「ぼくは勉強ができない」・山田詠美 著・新潮文庫

これはかなり楽しみながら読めた本です。でも、学校の先生には、ちょっと苦々しいかも。主人公は男の子ですが、思春期の子どもの中には、必ずある感情。世の中を上手にしながら生きていくのがヘタな人向きかな。かつては自分もそうであったし、今でもそういう部分を持ちながら生きていくということ。頭ごなしなのや、権力を嵩にして圧力を掛けるものには、服従したくないという気持ち。学校の勉強ができなくても、大切なことはちゃんと勉強している。

「朗読者」・ベルンハルト・シュリンク 著・新潮社文庫

この夏で一番考えさせられたのは、この本でした。翻訳の本はイマイチ苦手だったのですが、訳者の方が本当に上手で、引き込まれました。自分が愛して、好きなのに別れた人の過去が罪深いものだったら、その人を憎むのか?罪人でも愛し続けるのか?人を理解する事、受け留める事、愛し続ける事について深く考えさせられる1冊でした。今でも、彼女は死ぬことでしか、救われなかったのか?とか、許してあげてほしいとか、深い愛だけれど言葉が足りないゆえに届かない事や、すれ違いな事に考えさせられています。是非、読んでください。

「贅沢なお産」・桜沢エリカ 著・新潮文庫

著者はマンガ家なのですが、随分前から著者のマンガは読んでいました。「しっぽが友達」というネコとマンガ家との日常を綴ったマンガでなかなか好きです。で、その著者が自分のお産について行き着いた自宅出産についてのマンガとエッセイの本。助産婦さんのくだりなどは、こんな方だったらお願いしたい・・・。と思ったり。恐ろしく高いお値段の病院の話などいろいろ。占い師の話に頼りすぎ?と思ったり、為になる話もいろいろです。

「奇跡の人」・真保裕一 著・新潮文庫

毎年、新潮文庫100冊という小冊子が出ますが、その中から選んで買ったのが今回の本。ここは、オススメの本のページですが、これはオススメという程の本ではないかも・・・。主人公が交通事故で脳に障害があり、事故以前の記憶が無く、事故以来からもう一度生まれたての赤ん坊から人生をやり直すまでの前半、工場に就職し、自分の過去に興味を持ち、自分探しを始める所まではおもしろいのですが、後半がちょっとキツイ感じがしました。読後の感想はミステリーだったのか・・・。こういう結末でも仕方ないかな?という感じです。

まあ、個人的に好みな終わり方ではなかったというか・・・。2時間ドラマが好きな方にはいいかな?

「さくらえび」・さくらももこ 著・新潮文庫

昨年の夏、さくらさんのそういう「ふうにできている」を読み、冷静に自分が妊娠、出産する事を見つめたエッセイを読み、かなり感心しましたが、今回びっくりしたのは、さくらさんが離婚していたことでした。しかも、そのとき生まれた赤ちゃんは小学4年生でした。エッセイの中で好きだったのは、「あの日の奈良」はじーんとした感動が押し寄せました。「必見・おならレポート」や、「ヒロシの挑戦・しまなみ街道」はうぷぷ・・・と笑ったり。さくらさんのエッセイはその瞬間は本人も一生懸命なのに、ちゃんと客観視しているもう一人の自分がいて、クールなエッセイが書けるところがスゴイと思うのでした。

「天然まんが家」・ 本宮 ひろ志 著 ・ 集英社文庫

私が子供の頃、週間少年ジャンプで作者の漫画が掲載されていました。「天地を喰らう」や「赤龍王」というタイトルでしたが、非常にインパクトの強い漫画でした。最近では、サラリーマン金太郎がテレビドラマ化され、作者を知らなくても、このドラマを知っている人は多いのではないかと思います。体育会系の作者がどのようにして、現在の漫画家となっていったのかを語る1冊です。多少笑い有りです。

「妖精のネジ」・ 奈知 未佐子 著 ・ 小学館文庫

久しぶりに暖かい涙が出る本に出会いました。漫画ですが、絵もほのぼのしていて、それでいて登場する、馬、猫、子供達、子供の気持ちを忘れた大人達が読み手の気持ちをゆさぶります。今まで書店で何度も手にとって、置いていたのですが、もっと早く買って見ればよかった・・・と思ってしまうぐらい素敵な本でした。漫画というより、絵本に近いかな・・・。

「エジプトが好きだから」/ k・m・p 著  角川文庫

以前このコーナーで紹介した、好きなことで金もーけしたい野望を持つ、k・m・pの2人が描いたエジプト旅行記です。たしか、初版はJTBより発行されたのですが、文庫として登場しました。文庫化されてちょっと文字が小さくて見難いかもしれませんが、ちゃんと別ページにフォローされていますし、文庫ならではのおまけのページもあります。見て、感じて、笑って、怒って感動して、また行きたくなってしまう、そんなエジプトの旅行記です。