おじいちゃん
私の祖父は8年前に亡くなりましたが、今でもよく色んな事を思い出します。小さい頃の思い出は祖父と一緒のものがほとんどです。
耕運機の上に山積みに積んだ牧草の上に乗せてもらって、畑から家まで一緒に帰った事。
モンシロチョウの舞うキャベツ畑の真ん中で、ハモニカを吹いてくれた事。祖父はハモニカが上手で、戦場にも持って行って吹いていた事なんかを話してくれました。音楽で習うハモニカの曲は祖父が一緒に練習してくれました。
牛舎で、みかんを食べるときに、剥いた皮がタコの形になるようにゆっくり、じっくり時間を掛けて、「ほら」と広げたみかんの皮が、ちゃんとタコの形になって、ちゃんと目や口が出来ていたり、牛に食べさせるように切ってきたススキの穂を集めて、フクロウを作ってくれたり。
虚弱体質だったから、カブのバイクの後ろに乗せて学校まで送ってくれたり、雨の日はおばあちゃんの合羽を持って、共働きだった親の代わりに迎えに来てくれたり。淋しい思いなんかした事がなかったのではないかなと思います。
椎茸採りや菌打ち、栗拾い、山へ行くのが楽しかったです。
河童との相撲のとり方を教えてくれました。
河童は相撲が好きなので、子供が川の縁を歩いていると、川から上がってきて「相撲をとってくれろ」と頼むのです。実は河童は子供のような小ささですが、その力は馬をも川へ引きずり込む程の力をもっているのです。河童は子供の「尻こ魂」が大好き。子供はすぐに「いいよ」なんて言ってはいけません。う〜んと考えて、「お願いします」と頭を下げたら相撲をとってもいいと言わなければなりません。河童の頭には皿があり、天水と呼ばれる、力の源の水が入っているのです。河童は頭に気をつけて、ちょこんとおじぎします。子供は「もっと!もっと!」と深く頭を下げるように言い続けます。河童は相撲がとりたいので、つい深く下げすぎてしまい、ちょろっと水が零れてしまいました。とたんに河童の腰がぬけて、へなへなと尻餅をついた所へ子供は走って逃げるのです。
昔は子供の水難事故を無くすように、子供が川へ近づかないように、こんなお話を教えていたんでしょうね。他にも淵と名前が付く場所には河童が出たという話があります。ここはばぁちゃんが足を引っ張られたけん、泳いだらいかん!という場所とか。
祖父との思い出は尽きません。つらいときは仏壇の前に行ってぐっとこらえます。そうして、必ず、祖父に幸せだと報告しよう。それまでは、必ずがんばろうと誓うのでした。