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ノラりん

今日は12月にいなくなってしまった、ノラりんという猫のお話をしたいと思います。

ノラは今から5〜6年程前に現れた、野良猫でした。

時々、見かける白黒のブチ猫、それが野良猫、ノラりんでした。白い部分はいつもごみ漁りで灰色になり、ヒゲは時々ゴミ焼きの残り火かなにかで、ちぢれていました。いつも、人間を遠巻きにながめ、犬が散歩や寝ていて居ないとき、こっそり犬の残りゴハンを食べていました。もう、猫はいらん!!と家族は野良を追っていましたが、こっそり母と交代で家の猫の残したゴハンを食べさせていました。

いつも家の周りで待機していて、家族もそのうち追わなくなり、皆好き勝手に、自分の好きなように呼び始めました。

「デブりん」「ノラ」「ノラりん」「どらえもん」「ドラ」等など・・・。ノラりんの好きな場所は、玄関の緑色の芝生風マットの上です。いつもいつも日向ぼっこ。天気が良くても、朝でも、昼でも、時々人間が躓いても、自分の場所と決めていました。仕事が終わって車から降りようとすると、家の猫はしらんぷりで遊んでいるのに、車のドアの所までお出迎えしてくれました。ひそかに「おデブかえ」と呼んで笑っていました。

そんな風でも、撫でようとすると、すごく恐ろしがって逃げてしまいます。お腹を絶対にみせたりしませんでした。

ある日、アラタと名付けた、洋種の猫がふらりと入り込みました。アラタという人の家で飼われていたと思い込み、猫をそのままの名前で呼んでいました。人に懐こく、抱っこが好きな猫で、甘え上手な猫さんでした。ノラりんよりも後に入ったのに、人間に甘えるのが上手なので、ノラりんは焼もちを焼いてアラタを追いかけていました。

そんな事が続いていましたが、お布団や車の掃除をしていると、ノラりんが手が届かない場所でお腹を見せて、転がっていました。触ろうとすると逃げ・・・を繰り返し、この頃からやっと抱っこやお腹ナデナデができるようになりました。ノラりんが来てから約3年が経っていました。

いつも灰色だった毛は真っ白なふわふわになりました。おびえる様な目は、いつもうっとり眠そうな目に変わりました。

病気になて激ヤセしたり、怪我したりいろいろな事があって、まだまだ一緒にいられるとおもっていたのに、ある日、急にいなくなってしまいました。

そういえば、いなくなる前の数ヶ月はあんまり遠出しなかったな・・・とか、いなくなる前日の晩に、道路の脇を歩く小動物を直感でノラりんと思って、車から降りて、「ノラ、お家に帰るよ」と声掛けたのに、山の中に入って行ってしまったな・・・と今になって色々思いつくのです。

12月31日の夜中、弟の向かえの帰り道、隣の地区の道路脇にノラりんにそっくりの野良猫を見つけました。

嬉しくなって、「ノラ〜!ここにおったと?一緒に帰ろう・・・」と車から降りて近づくと、猫は不思議そうな顔をします。よーく見ると、顔の模様がほんの少し違って、随分若い猫に見えました。

ノラりんの子供?そう思いました。そして、ノラりんはもう帰って来ないような気持ちになりました。

半年ぶりに会った弟に、その猫の事を話すと一言

「ふーん、猫山に行ったと?」

ノラりん、猫山に行ったと?遠野物語のように、いつか、山で迷ったら助けておくれね。

どこかで、元気にね・・・。