別れ
玉井 哲夫
この道は
後戻りのできない道です
振り返っても真っ暗で
見えるものといえば
街灯のようなものが
過去に向かって続いているだけです
それは記憶の輝きというもので
昔のことを映し出しているのです
ここがどこなのかわからないけれど
今日まで一緒にあるいてきたあなたは
ここからいなくなってしまうのですね
あなたの記憶は閉じられて
はるかな過去のものになっていきます
これからは
振り返るたびに見ることでしょう
あなたが輝きをもってわたしを照らすのを
おゆきなさい
あなたの心に残った
遠くなつかしい思い出とともに
おゆきなさい
あなたが好きだった
過去の人たちのところへ
病も苦痛もなく
老いも死もなく
ただ安らかな日々をお過ごしなさい
目覚めることのない眠りとは
そういうものです
残された者のなぐさめとは
そう思うことです
この道は
後戻りのできない道です
そして
祈りが生まれてくるのは
この道だけです